このページを読む者に永遠の呪いあれ 紹介

松本合同図書館の三階の一番奥にこの本は並んでいた。アルベール・カミュの論文を読むにあたって必要な「カミュの手帳」という本を借りに行ったときこの本を見つけた。

ラテンアメリカ文学選集の中の一冊であるこの本は久しぶりに手に取られたようだった。かすかに誇りが積もっていた。初版が1990年とそこまで古い本ではなく状態も良好だった。

なぜ、私はこの本に惹かれたのだろうか。それは、タイトルが衝撃的だったからである。読むだけで呪われるというタイトルは今まで聞いたこともなかった。素晴らしいセンスだとその時作者に賞賛を心の中で送っていた。

本の著者はマヌエル・プイグ。アルゼンチンで生まれ映画監督、脚本家を目指したが、諦め小説家に転向した。ポップアート初の文学的成果と呼ばれ、巧みなストーリーテリングと現代的な主題でラテンアメリカでは人気のある作家だ。日本にも来たことがあるらしい。

残念ながら私は存じていなかったが、人気のある作家ということは調べてみて感じた。

さて、タイトルの本の紹介を簡潔におこなおう。タイトルは『このページを読む者に永遠の呪いあれ』、著者はマヌエル・プイグ。訳者は木村榮一。発行は現代企画室だ。

あらすじはこうだ。ニューヨークに暮らす老アルゼンチン人と彼に付添うアメリカの青年。二人が小気味良くする会話によって話は進む。二人の会話から浮かび上がってくるのは人が抱える闇。

どのページを開いても共通していることがある。それは、全ての文章が会話文だということだ。本当に全てであるから始めは信じられなくて隅から隅までめくってみたがどこにもくくられてない箇所はなかった。

さすが、現代アートといったことだろうか。新たなる境地に達した小説とも言えるだろう。新たなる文学という形。

こんな小説もあるのだという驚きとその特徴を生かした斬新な小説を読みたい人に合う本であるだろうと思った。