新約 とある魔術の禁書目録 書評

あらすじ

ローマ正教の暗部『神の右席』最後の一人、フィアンマがロシアから起こした第三次世界大戦は、上条当麻の活躍により終結した。彼の、消失と共に。ここは上条当麻が存在しない世界。魔術サイドは再編・改善がすすみ、信徒たちには安息の日々が訪れていた。科学サイド総本山の学園都市では、最強の超能力者・一方通行が、『闇』と手を切り、打ち止やめ番外個体と共に騒がしくも穏やかな日常を過ごしていた。そこには『グループ』の影も無い。元スキルアウトの無能力者・浜面仕上は、ロシアで手に入れた『闇』との交渉材料を懐に、絹旗、滝壼、そして帰ってきた麦野と共に新生『アイテム』を結成、活動を再開する。闇からの『卒業生』たちは、平穏を手に入れたのだ。?凶悪な『新入生』が、彼らの前に現れるまでは。新約編、スタート。

いままでのシリーズで一番微妙。

以後、ネタバレあり。

微妙なのはたぶん敵が弱いかつ魅力的でないからだ。

敵の黒夜はあまり強そうに見えない。彼女の戦う背景も今までで一番敵キャラなら薄っぺらい。苦戦していても主人公側が結局は勝つんだろうなと思ってしまう。予定調和は王道では一般的だけれど、そこに至る過程で苦戦しなくてはいけないと思うがそれができていない。

今回は一方通行は途中で話から抜けたりして本筋との連帯が欠け、また苦労はしたが苦戦はしていないし、相手を最後まで圧倒してしまった。負ける姿が想像できないから危ないやばいよというみたいに読み手がわくわく出来ない。

魔術師は一人でもすごい力を持っているというイメージを与える。超能力者もこれまでは対応する相手に合わせ相手を苦戦させる実力の持ち主だった。科学者達は連携でかかってきて強さを感じさせる。
だが、今回の相手は強さが伝わってこない。それが楽しむことが出来なかった原因だろう。


黒夜ではなく、もうひとりの敵は浜面に対してはすごい強かった。その名はシルバークロースだ。殺人ディスクを操り敵を切り刻み、パワードスーツで敵を殲滅する。だがそれでも足りない。
殺人ディスクはありきたりだし、恐怖をあおるような攻撃が描けていない。淡泊な事実の羅列にとどまる。こうやってこうして倒したみたいな。
パワードスーツも強いのだけれどいまいち。なんか浜面に余裕があるような戦いだと言う印象を受ける。


そんなわけで敵の器がしれている戦いでは、すごい物があるという背景を感じ取れずいまいちだったということ。確かに作者が言うように科学側もパワーアップしているというのは分かったけど、想定の範囲内にとどまった。驚きがない。旧アイテム組とのからみも最後まで微妙だった。

その他。
御坂ワーストと打ち止め、絹旗、麦野、滝壺はかわいかった。

上条さん復活はどうして起こったのか。科学側が警戒するやつらとは、どの魔術師なのか。たぶん、次回は面白い。最後の前振りだけでそれが印象付けさせられる。
新章なのに番外編というのが心に影響したのも一因かな。点をつけるなら5点満点3点。この点ならばこの巻を外して読む必要はなく、ぜひ読んで欲しい。