ミグストラノート

ラノベ読みの日記です。その他、地質。

Fate Zeroで切嗣が聖杯に叶えて欲しかったこと

スポンサードリンク

Fate Zero文庫本版、全6巻が今月の新刊をもって完結した。Fate stay nightの世界で断片的に語られていた前回の聖杯戦争の話を描いた作品。虚淵玄によって書かれた作品は本家とはまた違った良さがある。銃器による魔術師への攻撃など、魔術というものから離れた衛宮士郎の義父、切嗣を主人公にしている。

ネタバレあり。


Fate stay nightの方では魔術というものにこだわるあまり、合理的な判断を登場人物達がしていないように思えた。そのため、自分なら自らを危険にさらすようなことをしないのにという歯がゆい気持ちになる。しかし、Zeroの方では勝ちに行くため魔術師達が常に隙のない行動をしている。なにか行動するときにも情報を十分得て、そこから合理的な判断をしている。敵に見つからないように、多くの隠れ家を持つなどそれは徹底している。それが大きな違いだ。


全体として長さに制約があったのか最後の方が駆け足である。文庫本ならばもう一巻加え、アーチャーとライダーとの戦いにもっとページを割いてもいい。それを除けば、最後は絶望ではあるが息子士朗へと繋がるバトンの渡し方は素晴らしい物であると思う。切嗣の願いは聖杯に土壇場で裏切られ、もはや生きていることに何の価値を持たないまま死んでいくはずだったが、死ぬ間際の士朗の言葉によって救われたのは良かった。絶望のまま死ぬことなかったからである。彼の意志は士朗が受け継ぎ、貫き通すことになる。それが楽ではないことを実感しながら。


血と銃弾のハードボイルドな世界を描いた作品と思い込み、本作を避けるのは損と言わざるおえない。確かに、銃弾による殺しあいや血まみれの子供の死体の山などは出てくるがそれはメインではない。あくまでも、登場人物の狂気を描くための材料でしかないのだ。もっと重要なのは聖杯戦争を通して彼らが何を考え、かなえたかった願いについてどう思うのかである。グロイ描写こそあれ比較的楽に読み進めることが出来た。グロイといっても読んでいて気持ちの悪くなるような目の玉を生きたままえぐり出すような物はないし、レイプ描写があるわけではない。気構えしていた僕としては拍子抜けすると同時に安心もしたのだった。


切嗣は、多くの人を救うために少ない人を殺すというその関係性を破壊して、だれも傷つかなくて住む世界を作り出そうとした。そんな奇跡みたいなことは聖杯でしか不可能であると考え、それを欲したわけだが、願いを叶えてもらう人自身が描けないプロセスを経て、聖杯は願いをかなえることはできないということを直前で知る。つまり、切嗣が描くプロセスを経て恒久の平和は成り立つわけだから、少数を切り捨てることでしかそれは達成できないことになる。彼の願いは聖杯では妻を犠牲にし全てを掛けてもそんな絶望を引き起こす願いは叶えられなかったのだ。


セイバーが切嗣をFate本編で誤解していた理由も判明する。彼女の願いもかなえるはずだった聖杯を自身によって破壊させられた理由が分からなければそう思ってしまうのも当たり前だ。納得だった。


切嗣は次の聖杯戦争を阻止するための対策をして死んでいったため、同じ悲劇が起きるとは思っていなかっただろう。10年後という早い未来に聖杯戦争が始まらなければ、そうなるはずだった。もし聖杯戦争が起きなければ士朗の運命も大きくかわっていたはずである。



どうでもいいのだが、今回の聖杯戦争予想外の生き残りが一人いるんだけど。まさか、生き残るとはね。彼は何をしていたのだろうか、10年後。謎だ。

Fate/Zero(1) 第四次聖杯戦争秘話 (星海社文庫)

Fate/Zero(1) 第四次聖杯戦争秘話 (星海社文庫)