ハードカバーのライトノベルレーベルというアイデア

ライトノベルは、ほぼ100%文庫である。文庫はハードカバーと比べて廉価であり、気軽に購入することができるので、揃えやすいという利点がある。それが、資金力が乏しい主な読者である中高生にとって購入の誘引力となっている。

一方、廉価であることがマイナスになっていることがある。それは利益が少ないということだ。著者が受け取る印税も出版社の利益も少なくなっている。印税は売値の10%であるから、ハードカバーを1400円とすると140円、文庫本を600円とすると60円となる。およそ2.3倍の量だけ売らなければハードカバーと同じだけの印税を受け取ることができなくなっているのだ。

とはいっても、今の事実だけ見て憤慨するのは愚の骨頂。値段を高くしても売れなければまったく意味はないのだからだ。


それらを考慮して、ハードカバーのライトノベルレーベルを作ることを提案する。

利点は、2つ。
一つ目は、著者の受け取れる印税が増えることだ。一巻当たり1万部売れる作者でも、一冊600円で印税率10%だと仮定すると60×1万で60万円。真面目に働いて、年4巻出しても240万円。これでは食っていくのは難しい。だから、編集が兼業を勧めるのだ。そして、出版社も同じく儲からない。

二つ目は、文庫落ちにより利益をあげられることである。ハードカバーで一度出した後、しばらくたってから文庫にして売り出すことは一般文芸ではあたりまえのことだ。初めから文庫で出してしまえばその分の利益を損ねることになる。また、中古書店に出回った古書も安い文庫ならば対抗できる。


一方で、冒頭で挙げたように値段が高くなれば買う人は減る傾向がある。しかし実際、西尾維新は、あのひどい箱入りの上に値段の高い講談社BOXでも売れている。
よってハードカバーのライトノベルを出すとしたら向いている作家の種類は二通りあるだろう。
まず、当然ながら人気作家。ファンが付いているので値段が高くなっても買ってくれる。そして、コアなファンが付いている作家。利益率が高くなれば、小部数でも買ってくれる人が拡充されている方が有利だ。寡作であっても、生活出来るだけの利益が見込まれれば、安心して新作が書ける。

例えハードカバーがあまり売れなくとも、文庫落ちした時には中高生も手にとってくれるだろう。すぐに読みたい人はハードカバーを買えばいいし、そこまで急がない人は文庫落ちしてからでいい。そういった差別化も生まれる。


いいアイデアだと思うのだけれど、どこかの出版社やらないかな。ライトノベル扱ったことのない所でも、これに向いている作家さえ集まれば始められる。ただ流行に乗ってライトノベルレーベルを作るよりも、新しいチャレンジをしたほうがこれから先、生き残りをかけたレースを勝ち抜きやすくなるに違いないのだから。


追記
コメントで補足しました。